生徒さんのファーストレッスンの感想(50代女性)

わたしはひとりっこです。
いつも家では親の目を気にしながら過ごしていたのだろうと、
今から振り返ると思います。

状況や人間関係のなかで、わたしが求められる人間像を想定し、
その人間像に近づくような努力を重ねていたと思います。

合唱の練習でも、過度に指揮者の求める音楽や声を意識しすぎて、
指揮者の顔色をうかがい、いつしか頭で考えることしかしなくなり、
自分の声を見失っていました。

イジメを経験した高校時代を経て、大学に通っていたころ、
自分をだめな人間になったのだと思い込み、
性格や考え方まで修正を加えようと
病的に自己否定を繰り返していました。

その結果、わたしは本当に病気になってしまいました。
離人症という、自分がどこにいるのか分からない、
実際に生きている実感がないという、恐怖しかない
隔絶された不可思議な感覚のなかに四六時中閉じ込められてしまいました。

両親の激しい叱責やしつけ、
そういった規範意識に添うことや自分を責めることで、
良い子になれる、幸せになれると信じ込んでいたのですね。

合唱団の先輩から紹介を受けて出掛けた香西先生の
アレクサンダーテクニークのファーストレッスンは、
先生との静かな会話から始まりました。
アレクサンダーテクニークは治療ではないこと。
音楽家のためだけでなく、すべてのひとのためにあること。
身体のことでなにかしら困っていることはありますかといった
聞き取りもありました。
アレクサンダーテクニークは心と身体を分けて考えないという、
基礎的な説明を受けて、まずは治療台に横になり、(※治療台でなく、ライダウンテーブルといっております。治療ではないので!香西)
「先生の動きを身体で手伝わない」という、ちょっと分かりづらいですが、
そのようなレッスンをしました。

足を持ち上げられそうになると、ふつうは先生が重いだろうと
瞬時に判断する頭が働いて、動きを手伝ってしまいますよね。
ほとんど無意識的に行ってるので、それをしないように
「相手の動きを手伝うことをやめる」
「力を抜いて、相手の動きにすべてを委ねる」
ということをしていきます。
これが実に難しい。
相手を信頼しきることがどういうことだったのかを、
思い出させてくれます。
例えば接客業や営業のような職種だと、相手の動きや想いを先回りして
相手であるお客さんを良い気持ちにするように動くと思います。
こころで思っていることとは別のことを口にしたり、
気を遣いすぎることが日常になってしまいますよね。
そういったことを気遣いを一切やめ、相手に委ねた状態が
どういったものだったかを思い出すのです。

全身にその感覚を思い出させるように、
先生が介助してくださるので、
とにかく腹の底からふ~っとリラックスしていないといけません。

時間をたっぷりとかけ、わたしがリラックスするに従い、
先生の呼吸も深く長いものになっていくのがわかりました。
わたしの呼吸や波動など、微細なものを感受して、
先生もわたしと共振するように導いてくださるので、
より深くリラックスをすることができるようでした。

次には立った姿勢から、膝を折って座る、立ち上がる
という動作のレッスンをしました。
無駄な力や負荷のかからない動きがどいういうものなのかを
体感していきます。
こういった基本動作を繰り返して自覚すると、
いかに普段をいい加減に身体を扱っていたかが分かります。

ちょっと話は逸れますが、以前わたしは表千家の茶道に
入門していました。長くは続けられなくて残念だったのですが、
お茶のお稽古で何をするかといえば、
戸の開閉や歩くときの足の運びかた、
掛け軸を時間をかけて鑑賞する、
炉の炭の配置を鑑賞する、
炉に置かれた香の香りを感じる、
お茶碗を鑑賞する、
両手で丁寧にお茶碗を鑑賞する、
帛紗(ふくさ)で折り方を変えて、茶さじを清める、
お箸をとって、お菓子を懐紙にとっていただく、
お辞儀をする
列席者と掛け軸やお茶碗の由来やそれにまつわる物語を
聞きあい、歴史や文化などを語り合う
といった、ごく日常にあふれる動作をより丁寧に、
様式美に則って行うわけです。
そのおかげで、普段の生活でもお茶碗を大事に扱うことができ、
指先の所作にも気を配るようになりましたし、
美術鑑賞のときにも装丁などをじっくりと味わうことができるようになりました。

アレクサンダーテクニークにも
茶道と同じような効用があるように感じました。
香西先生が繰り返しお話ししてくださった
「自分のなかにいること、あるいはどんなに動揺しても
いつでもすぐに自分に戻ってこられること」
この重要性と居心地の良さを感じることができました。

普段の所作や動作、心や身体の動きも相手を過度に先回りして緊張することがないよう、
自然体のわたしを取り戻せそうな気がしています。
わたしたちは、生まれてきてから今も、これからも、
ずっと自由なのです。
他人の尊厳を傷つけない限りにおいては、
わたしたちは、自由でいいし、わたしのままでいいのですね。
アレクサンダーテクニークは、ぜひこれからも続けていきたいレッスンです。
ご興味をもたれた方はぜひ香西先生のご著書のご一読をお勧めいたします。